03-01.本当の財源は供給能力

供給能力とは、何らかのモノ・サービスを提供するのに必要な労働力、原料、技術、設備、インフラ(道路とか連絡手段とか)のことを指します。

供給能力が大切であり、国家レベルでは事実上の財源であること例え話で説明します。

 

  • 無人島での例え話

非常事態になればなるほど需要と供給の潤滑剤に過ぎないおカネは、本来の「ただの紙」に変わり、本当に大切なものが必要となります。

もし、A君とB君が乗った豪華客船が遭難し、乗客だったA君とB君は遭難して無人島に流れついたとします。A君とB君は知り合いでもなく、同じ国から来ている訳でもありません。遠く流されたので早期の救助は望めないと2人は考えています。

 

そんなとき、A君(日本から来ているひと)はB君にどうやって協力を頼みますか?

お願い(1) お金(日本円)を支払うから、〇×▼を手伝って欲しい。

お願い(2) 力仕事をするから、〇×▼を手伝って欲しい。

 

 

この場合の正解は(2)となりますよね?

A君はB君に力仕事という供給能力を掲示することでB君の協力を得ようとします。

帰るあてもないし、帰ったとしても日本から来ている訳ではない相手には、使い道のないおカネ、日本円を渡して協力を得ようとしても無駄というものです。

 

 

  • 国内での取引の場合

おカネ(自国通貨)を取引の際に使用しますが、実際の主役は供給能力です。

実際には供給能力に対する対価として同価値の供給能力を提供出来ないために代わりにおカネを使用しているだけです。

長期のデフレ下でおカネを中心に物事考えがちだとは思いますが(苦笑)

もう一度、考えてみて下さい。
実際の主役は供給能力、つまり、主役はこの国で働く人々、技術、設備、資源の方です。

 

  • 国同士の取引の場合

日本円でやり取りしない国同士の取引でも「供給能力」は非常に重要となってきます。

供給能力が低い国は、外国に頼らざるを得なくなり経常収支は赤字となります。
すると自国通貨安となり、輸入品は値上がりしていきます。
また外貨調達のために外貨建て国債を発行せざるを得なくなります。通貨暴落、高インフレ、財政破綻も起こるようになります。

 

●今、自国通貨建て国債を発行し変動相場制であっても経済危機が起こるシナリオ

①国内の需要を国内の「供給能力」で賄えない状況になる。(大前提)

②輸入で補うしかなくなり貿易赤字となる

③貿易赤字拡大が金融取引も含めた経常収支赤字にまで発展する
*元々、海外に資産を持たない国はすぐに貿易赤字⇒経常収支赤字へと発展する

④自国通貨の為替レートに下落圧力がかかる

⑤輸入物価急騰を防ぐため、政府に対ドル固定為替相場制を採用させる:固定相場制
*固定相場制を採用しなくてもいいが、その場合にも供給能力不足状態では継続的な自国通貨安、輸入物価高騰による高インフレが発生、ただし変動相場制維持の方が輸出には有利になり、供給能力を改善させやすい。

⑥政府は対外赤字が拡大する中、固定相場を維持するため、外貨準備を取り崩し、「ドル(基軸通貨)で自国通貨を買う」為替防衛を続ける

⑦外貨準備が尽きそうになったら、外貨建て国債を発行し、為替レート維持のための外貨を手に入れる:外貨建て国債

⑧大前提である状況①を解決出来ないと、遅かれ早かれ、通貨暴落、輸入物価高騰による高インフレ、外貨建て国債による財政破綻のいずれかが発生する。

自国で供給できる分しか、国民は本来 需要出来ないもの

よって、国内の需要を賄える供給能力を持つことは必要不可欠。

「供給能力こそが本当の財源」

 

日本は国内の供給能力が他の国と比較し、ずば抜けて高いです。

だから自国通貨建てで国債を発行し、変動相場制であっても円の価値が低下し続けるということはありません。

国内の供給能力の高さは、毎年の経常収支黒字及び対外純資産という結果として表されています。

海外からの収入(2019年の経常収支黒字額):20.05兆円

これまでに海外からの得た資産(2019年末の日本の対外純資産):364兆5250億円

 

(おまけ)

一方、海外に貸しを作り続ける今の状況に何も問題ないかというとそうではありません。

現在の日本は長期に渡った貿易黒字を国内へと還流するのではなく、海外へと再投資することによって利子・配当等の収益を上げられるような国となっています。

「モノづくり日本」から「金貸しの国 日本」への変容です。

引用元:内閣府資料

  • 第一次所得収支:対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す。

 

恨まれる側にとっては筋違いと思うかもしれませんが、金貸しで儲ける国は、金貸しが恨まれるのと同じように他国から恨みを買います。

米国による欠陥が疑われる武器や遺伝子組み換え作物の、日本への買い取り圧力も貸しの解消の延長線上で行われます。日本には自国の供給能力に見合った国内需要を作り出す国際的な義務があります。要するに供給能力に見合った財政拡大をしなさいということ。義務を果たさなければ、場合によってはゴミを買わされる羽目に陥ります。

 

03-02.供給能力について

本章では、改めて供給能力について説明します。

 

・供給能力という表現について

供給能力とは、何らかのモノ・サービスを提供するのに必要な労働力、原料、技術、設備、インフラ(道路とか連絡手段とか)のことです。

一連の説明では全て供給能力で統一しています。しかし実際は、潜在GDP、実物生産キャパシティ、資源、生産力、外貨調達能力、供給リソース、商品生産能力等様々な呼び名で説明されており、統一はされておりません。

従って、供給能力とは、「モノ・サービスを供給出来る力」のことなのだなと各自しっくりくるイメージ・言葉で捉えて頂いて構いません。

 

・供給能力は数値化出来ない

国レベルの供給能力は、潜在GDPと呼ばれますが、実は潜在GDPは測ることは出来ません。

というのも、もし、貴方が“貴方がどこまで仕事を頑張れるか数値化してみて下さい”と言われたとして自分の限界が分かりますか?

個人の限界が分からないようにMAXで供給出来る力の数値化は本来出来ないものなのです。

一方で潜在GDPを数値化していることもあります。しかし、これは過去何年かのGDPを平均化して算出したもので平均概念の潜在GDPと呼ばれます。

平均概念の潜在GDPは潜在GDP、供給能力ですらなく、言ってみたら(海外への輸出分を含む)過去何年か分の平均の需要を現しています。

詳しくは潜在成長率の秘密 信じがたい「平均概念」の欺瞞と恐怖を知ってくれ [三橋TV第283回] 三橋貴明・高家望愛

 

・供給能力とインフレ率

国レベルの供給能力が測れないため、需要と供給の差であるインフレ率にて供給能力が推し測られます。

 

●需要が高まれば企業は儲かるとみて供給能力に投資し、供給体制を高めていくことも起こります。需要と供給の差であるインフレ率は変わらないけど、供給能力は高まっているということは起こります。

 

●同様にインフレ率は変わらないが供給能力は減るという事態も起こります。

 

●また、インフレ率というのは社会全体の平均値であり、インフレになったけど比例して賃金は上がらず取り残されるひとも発生はします。

このためインフレ率では格差拡大の状況、個々の産業状況は把握出来ません。

 

◎よって、インフレ率によって供給能力をある程度推しはかることは出来ますが、完璧な方法ではないというのはご理解下さい。

 

・インフレ率の目安

例えば、「インフレ率 〇%までは国債発行で積極財政出来る」、というような表現は以上のような背景から使われます。説明では特記しない限り、インフレ率は年率で説明します。

 

インフレ率のデフレ脱却目標は2%ですが、もっと高くなっても問題ないです。

*デフレ脱却目標のインフレ率について*

インフレとデフレの境目はインフレ率0%のところだと思われるのではないでしょうか?

実は本来、人類というものは停滞を好まず、進歩を好む生き物のようで、毎年、供給能力(生産性)を自然に少しずつ上げていってしまうようです。毎年の供給能力が上がる分、デフレ脱却目標のインフレ率は0%でなく2%のようにやや高めに設定した方が好ましいのです。

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欧米で1970年代に起こった悪性インフレ、、英国病の例から数年間継続して10%を超えてくると高インフレによる悪影響出てくるようです。

参考)英国病(wiki)

 

ハイパーインフレとは30%(3年間で100%)もしくは12875%(1カ月で50%)以上のインフレ率を呼ぶそうです。

ハイパーインフレまで発生するには、元々供給能力で乏しい国であったり、戦争や国家崩壊レベルの大災害後の物資不足であったり、価格統制等の失政によって供給能力破壊が起こっていたりと様々な供給能力へのマイナス要因を含む必要があります。

参考)ハイパーインフレーション(wiki)

 

◎デフレ脱却目標のインフレ率は 2%だがもっと高くなってもよい
●数年間継続して10%を超えてくると高インフレによる悪影響出てくる
・ハイパーインフレまでなるには数々の失政、戦争、国家崩壊レベルの大災害が必要

 

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